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「信くんの話」

 

こないだ友達と連絡のやりとりしていた。そしたらこんな話題になった。

「まさくんってさ、なんかすごく死についてのこと触れるよねー。明日死んでもとか、そんなこと。あとは後悔したくないって、なんでもやってみるよねー」っていう話になった

すごく久しぶりに親友のことを近く思って書いたその友達へのメッセージを残しておこうと思う。

 

 

 

 

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こないだな、ぼくの親友が亡くなってんていう話をしたやろ?

 

僕はほんまに田舎で生まれてん。小学校はいま全校生で80人くらいかな。僕らの時もひとクラスだけやった。ほんとに保育園から中学校まで、みんな一緒の学校でな、なんかクラスメイトいうよりも兄弟みたいな感じで幼なじみたちと育ったんよな。そんなひとりが信(のぶ)くん。

 

お父さん建築家でな、僕のおとんとおんなじで。家も2軒隣で毎日のように一緒に遊んでたよ。親同士も仲良いから、あんな風に、当たり前におっちゃんになっても、お互いじいさんになっても一緒に時間を過ごしていくんやろうなと思ってた。

 

僕よりモテて、僕より頭がよくてな、憎たらしいとこもあるんやけどいつでもまわりから愛されるやつやった。そんな彼とは大学生になってちょっと距離ができたんやけどな、会えば一緒に楽しい時間を過ごしたし、いろんなことを話してた。まさに僕にとって1番の親友のひとりやった。

 

そんな彼が亡くなったということをな、ある日僕は大学でいた徳島で知ることになる。おとんからの電話やったんよ。電話を受けた時はまだなんのことかよく分からんくて、けど帰ってこいというひと言でちょっと現実感が出てきた。それで帰ったんやけどな、2軒隣やのに信くんの家のチャイム鳴らせてへんねん。なかなか。これ押したら現実になってしまうーってほんまに怖くて。けど最後は押した。そしたらあいつのお母さん出てきてな、

「のぶくん、昌徳くんが会いにきてくれたでー」言うてはって。そして僕は彼に会った。頭に包帯してたけどな、きれいな顔してた。

 

そのままもう雪崩のように、お通夜が終わって、お葬式で泣きながら棺を持って送り出したけどな。それが全部終わったあとやったかなー。僕の中でな、とてつもない後悔がやってきたんよ。

 

信くんは自分で酒飲んで車運転して事故したんよ。けどそれはな、彼が亡くなる1週間前やってん。けど僕が事故したことを知ったのも、亡くなったことを知ったのもその1週間後やった。実はな、誰も信くんが死ぬなんて思ってなくて、それで彼の両親が昌徳くんには気を遣わせたくないから、よくなってから教えてあげてほしいってうちの親に話したらしいんよな。そしたら急に悪くなってそのまま亡くなってしまった。

 

僕な、そのことを聞いたときにな、もう自分のこと嫌いになるくらいに後悔した。彼が生きるか死ぬかやった1週間。僕はなんにも彼のことなんて思いもせずに、大学で適当に過ごしていた。何かに一生懸命やったわけでもない。ただなんとなく生きてた。もし事故した日にな、そのことを教えてもらってたら、僕は信くんのためにいろんなことできたかもしれんのにって思った。病院で手を握る。声をかける。神社にお参りをする。けど、そのどれもせずに人生の親友のピンチに僕はなんにもせんと、なんにも考えんと生きてたんよ。そのことをひどく後悔した。

 

それからしばらく精神的に不安定な時期がちょっとあった。基本は元気なんやけどな、ときどき発作のように涙がとまれへんようになって。自分でも困ってた。

 

ほんで半年ぐらいしてからかな、信くんが夢に出てきたことを覚えて朝起きたんよ。そのときにな、はじめてあいつの命を持って教えてくれたことを受け止めないかんと思った。それがな「後悔しない生き方をする」ことやってん。きみは今の僕しか知らんけど、僕はこんな性格じゃなかった。なんにでもチャレンジなんてできずに受け身なことのほうが多いような生き方をしてた。けど信くんに恥ずかしくない生き方せないかん、と思って最初のひとり旅に海外に出たんよ。ほんで今もこうして旅をしている。

 

 

こないだはな。いついなくなってもいいように後悔せんよう生きたい。ということだけを伝えたからな、悲しい気持ちになってたらごめん。けど僕はときどきそう思って生きてるよ。自分のいのちのことは自分だけでは決められへんと思うから。けどこうしてまだ自分にできることがあるうちは生きさせてもらってると思ってる。

 

それはな、別に危ない生き方をしようということじゃないよ。家族のためにも、教え子のためにも、出会った人たちのためにも絶対旅先で死んだりしたらいかんと思ってる。けど僕は僕の可能性を信じたい。僕がこの人生でできることを信じてやりたい。これが今の僕。

 

それが19歳のときやから、あれから15年。僕はこれまでしてきたことを後悔してない。こうして生きていることを後悔してない。起こることには意味があり、出会いにも意味があり、今もいろんな人に支えてもらって続けることができてる。心からありがとうと思う。