朝から地図とにらめっこ。
どうやらこの先は目的地のオアハカの手前の町まで130kmほど、
きちんとした町はなさそうだ。刻んでいくか、一気に走り抜けてしまうかだな。
しかし、MAPで拡大すると見事なグネグネ道が続いている。
だいたいに、グネグネ道になるのはふた通り。ひとつは川に沿って走る道路。
もうひとつは、疑う余地もない今回のような山間部を走る峠道。
スタートのメキシコシティから標高が下がり続けて、今日のスタート地点は
1000mほどだがいったいどこまで登ることになるのだろうか。
午前中は下り基調の道で、なんともなしに余裕を持って走り小さな町で昼食。
ごはんが毎日走る僕にとっては数少ない楽しみの1つなので、とりあえずという
感じではあんまり選ばない。町には必ず食堂がいくつかあるので、そこをまわりながら
活気があるようなところを選んで入ったりする。
今日のお昼はメキシコ風のピザのようなものと、牛モツスープ。
スープには生タマネギとレモンを絞って食べなさいと教えられ、
そうやったら臭みが抜けてうまかった。
これからの山道のため、水を買ってスタート。
町からしばらく走って、大きな川を渡ったところから登りがはじまった。
だいたい先の景色を見ながら、あの山の間を抜けていくのかな、
とかあそこらは木が生えていないから道路が走っているか、なんて予想しながら
登っていくが今日の登りはまるで先が見えない。
目の前180度はぜんぶそびえる山しかない。まさかあの送電線の脇を抜けるまで
登っていくわけじゃないだろうな・・・。
登りの様子をビデオで撮影したり、写真を撮りながら登っていたのもだんだんと
余裕が無くなってくる。おかしい、もう20km以上登っているやんか・・・。
きっとあの山を抜けたら、目の前に景色が広がるだろう!と思っていたら僕の思惑は
見事に外れ、送電線の鉄塔の脇をぐるっと回ると、そこにさらに高い山があった。
ダメだこりゃ。もう登り続けるしかないな。
1900m、2100m、それでもまだ登り、結局頂上は2250mだった。
この登り始めが800mくらいだろうから1500m近く登ったことになる。
最後はもう雲が目の前を流れていたもんな。そしてその雲が集まり、
いや〜な感じのまとまった雲になり始めた。
さあ、ここまで来たら麓の町まで走ってしまおう!
そう決めて一気に山道を下る。僕の周りは分厚く低いモクモク雲が広がっていく。
あと少し。あと少し。というところで大粒の雨が落ち始めた。
あかーん!このままやとビショ濡れになる!
もうこうなったときには、不思議なチカラが出るもんだ。
脇目も振らず、重いギアでペダルを踏み込み最後の数kmを走った。
町に入って、ホテルの場所を食堂のお姉さんに聞いて滑り込む。
ちょうどチェックインし終わったころには土砂降りの雨になっていた。
あー終わった。よくやった。142km。
あったかいシャワーを浴びて、小雨になったころにお礼も兼ねて、
さっき道を教えてもらった食堂に向かった。
「無事ホテルは見つかった!?」
「よかったわ!何を食べてく?」
お姉さんの横で、弟さんだろうかにいちゃんが炭火の上に、手持ちのついて挟める
網を持ち、なんだか美味しそうな具とたっぷりチーズの挟まったトルティーヤを焼いている。
ピザを半分に折ったようなものだ。迷わずそれを選んだ。
「メキシコにいつからいるの?」
「日本では何をしているの?」
「先生なのね!今はおやすみなの?」
「なんでそんなにお休み長く取れるの?帰って大丈夫?」
LIVE授業を各地からしていることは、説明できたが、これが仕事で学校に行かなくてもいい
ということは全く伝わらず、そんなに長く休暇がとれるなんていい仕事なのねということに
なってしまった。。。おぉスペイン語よ。。。
家族の生き生き声を掛け合い仕事をする感じ。
馴染みのお客さんがたくさん来て、外は雨が降ったり止んだりしているけれど活気がある感じ。
ずっと続いてきたその風景をちょっとだけ覗かせてもらうような、そんなのが好きだ。
まだ足りないだろう?これもうまいよ。とお兄さんが僕にタコスをくれる。
娘さんのほっぺたをつっつきながら、ぺろっと自分のごはんを食べて、また仕事に戻っていく。
ちょうど疲れと相まって、なんだか夢見心地な気がする夕食だった。
お礼に折り紙の鶴を折ってみんなで写真を撮って宿に戻ってきた。
デザートに買ったマンゴーを食べて、コーヒーを淹れて、少し経ったらもう目を開けてられなくなって
そのまま眠ってしまった。いい1日だった。
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