Flea Market


週末は土日ともに15kmほど歩いた。

アメリカのダーっと広い市街地の街では、まず公共交通か自転車でないと

まわりきれないけれど、それ以外の国では結構徒歩でもあちこちまわることができる。

 

「あの角曲がったらどんな感じかな」

「お!あっちの方が賑やかそうな感じ」

「行きはこっちやったから、帰りはちょっと別の道を」

 

なんて歩いていたら結構10km以上になっているようなものだ。

旅の間はずっと自転車移動なので、休養のための滞在では自転車はメンテナンス

だけにして、結構歩いていたりする。

あとは市街地では、どこでも自転車が停めにくいというのもある。盗まれたら大変だ。

 

さて、これまでSNSでは書いたことがほとんどなかったのだけれど、

僕が海外の旅で密かに楽しみにしているものがある。

多くの場合、それに出会えるのはヨーロッパもしくは、ヨーロッパの影響を受けた国々だ。

そして、ここメキシコでも出会うことができた。

 

「蚤の市」

 

これに出会ってしまうとほんとワクワクしてくる。

いまはtabikiというブランドでものづくりをしているけれど、

僕がここまで洋服やファッションに興味を持ったのは、

実はヴィンテージと呼ばれる古着を知ってからだ。

ちょっとだけ自転車旅をはじめるまでの僕を振り返ろうと思う。

 

大学に入った頃、ファッションに興味があったものの、お金がない僕は

ちょくちょく古着屋に行って、服を買っていた。

ファッション雑誌を読んでは、ため息をついていたが、買えないものは買えない。

そんなある日、よく行っていた古着屋でちょうどいい感じの服を見つけて、

支払いのためにレジ向かったそこで事件は起きた。

店員さんの後ろの壁に、ちょっとオーラがある感じの服がかかっていて、

なんとなしに値札が見えたのだが、あまりに高いので、思わずこう尋ねたのだ。

 

「あの・・・あのジージャンなんであんなに高いんですか・・・?」

今思えば大学一年の若造だったあの日に、僕の人生がひとつ傾いてしまった。

 

店員さんはいきなり目がキラキラと輝き始めて、大学の講義のように、

僕にヴィンテージのウンチクを語り始めたのだ。

 

この頃の生地にしかない風合い、色。

そして縫製やパーツにいたるまで現代のものとは、同じようで全く違う。

時代背景がそのまま反映された洋服は、技術が未熟だったからこそ、それが味になっていたり、

逆にいまそれを再現しようとすると、とんでもなく高価になってしまう手の込んだ仕様がある。

ヴィンテージは歴史そのものだ。これはどんな人や社会の歴史をともにしてきたのだろう。

そう思うとワクワクしてくるよね。これは歴史そのものなんだよ。

 

シビれた・・・。こんなおもろい講義受けたことない。もっといろんなものに出会いたい。

そこから僕は、もうとにかく古着屋で知らないヴィンテージに手を触れては、

生地、縫製、仕様を観察し、また古本屋でヴィンテージのことが載っている雑誌を買っては

scrapbookを作り続けた。

 

在学中にヨーロッパへのバックパッカー旅もはじめ、

2度目からはほとんど空のリュックで出かけて、蚤の市で買った古着や、

当時まだ日本に入ってきてなかったブランドのセール品を買い集めて、

週末のフリーマーケットで売り始めた。

 

僕が憧れたあの店員さんのように、僕も自分で選んできたものが、誰かの日常に

寄り添っていくなんてなんて素晴らしいじゃないか。

こうして、長期休みを利用してはバックパッカー旅をして、洋服を買い付けてくる

大学生活をしていた旅先で、今度は自転車で旅をする日本人に出会い今がある(笑

 

さて、そんなこんなでヴィンテージだけでなく、当時のまま時間が止まり

現代に残るアンティークも大好きになってしまった。僕が家で使っているコーヒーミルは

1930年代のイギリスのものだ。シンガポールのアンティークショップで一目惚れし、

あろうことか帰りの荷物を超過してまで日本に連れ帰ってきた。7kgあった。

 

なので、前回のカナダ・アメリカの旅でもほんとに気に入ったものは買って日本に送った。

ファイヤーキングと呼ばれる1940年代ごろのレストランウエアだったり、明治時代に日本の

磁器メーカーノリタケが輸出していたオールドノリタケと呼ばれる食器。

「そうそう!おかんが好きやからオカンのためやで!決して旅をサボっているんじゃない!」

と自分に言い聞かせて、道端で見つけたアンティークモールや蚤の市に吸い込まれていった

ことは数えきれない。

 

というわけでメキシコでも蚤の市に出会うと、ときめいてしまう。

さすがに食器はもうたくさんあるし、送るにしても壊れやすい。

今回はすんごく楽しみにしていた古い時代の洋館などで使われているタイルは

この国では価値が見出されていないのか、全く蚤の市に出てこない。

なので何を買うわけでもないのだけれど見ているだけでとにかく楽しいのだ。